弊社は6月22日、大学・研究機関が保有する特許を、質と量の両面から評価した「2008 年度大学・研究機関の特許資産の規模ランキング」を発表しました(※)。
特許の質の評価には、個別特許の注目度を指数化する「パテントスコア」を用いています。
パテントスコアは、大きく分けて「出願人の権利化への意欲」(早期審査請求、国際出願など)、「先行技術としての審査官からの 認知度」(拒絶理由通知に引用された回数など)、「競合他者からの注目度」(無効審判、異議申立の有無など)の3つの観点から評価 しており、パテントスコアが高い特許ほど、注目度が高い特許と見なすことができます(関 連記事)。
同ランキングでは、注目度と特許件数を総合的に評価しています。図1は、そのうち大学・TLOのみをピックアップし、上位10機関をまとめたものです。また図2に、この上位10機関が保有する特許資産の状況を可視化しました。縦軸は「総合力」(特許資産の規模)、横軸は「個別特許の強さ」(各機関が保有する特許の最高得点)、円の大きさは「有 効特許件数」を示しており、1つの図で3つの評価指標を表現しています。
これを見ると、慶應義塾のポジションが他の機関を大きく引き離していることが分かります。有効特許件数だけを見ると、同大学は上位10機関中3位ですが、注目度の面で得点を上げ、総合力(縦軸)で1位となりました。個別特許の強さ(横軸)では、1位が東北テクノアーチ、2位が京都大学となっています。東北テクノアーチの最も得点の高い特許は、カキのたんぱく質から抽出した化合物「カキペプチド」を利用して、血圧降下作用を見出した技術に関するも のです。この技術をもとに、生活習慣病予防などに効果のある機能性食品がすでに開発されているようです。
また、京都大学で最も得点の高い特許は、山中教授によるiPS細胞関連の特許となっています。同特許は2006年12月6日に出願され、2008年5月20日に早期審査請求を実施、同年9月12日には特許登録となりました。出願人による権利化意欲の高さがうかがえるほか、閲覧を6回受けており(2009年4月末時点)、競合他者からの関心度の高さもうかがえます。
このように、パテントスコアを用いた評価を行うことで、「注目度の高い個別の特許にはどのようなものがあるか」というミクロな視点と、「組織として の総合力はどのくらいあるか」といったマクロな視点での評価を両立することが可能になります。
図2大学・TLO上位10機関のポジションマップ
(※)【ランキングの集計について】
特許資産の規模とは、各出願人が保有する有効特許を資産としてとらえ、その総合力を判断するための指標です。有効特許1件ごとに特許の注目度を評価する「パテントスコア」を算出した上で、スコアの高低が明確になるように重み付けを行い、それに特許失効まで の残存期間を掛け合わせて、出願人ごとに合計得点を集計しています。
パテントスコアの算出には、特許の出願後の審査プロセスなどを記録化した経過情報を用いています。経過情報には、出願人による権利化に向けた取り組みや、特許庁審査官による審査結果、競合出願人によるけん制行為などのアクションが記録されてお り、これらのデータを指数化することで、出願人、審査官、競合出願人の3者が、それぞれの特許について、どれくらい注目しているかを客観的に測ることがで きます。2009年3月末時点において有効特許を1件以上保有している機関を対象に集計しました。
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