株式会社パテント・リザルト アナリスト 榎本 健悟
1990年代前半に実用化されたリチウムイオン二次電池は、従来の鉛蓄電池やニッカド電池、ニッケル水素電池等と比べて、軽量・小型、大容量という特徴を持ち、現在も技術革新が進んでいます。リチウムイオン二次電池は、携帯電話やノートパソコン等への搭載バッテリーとして広く普及していますが、自動車の電動化における中核技術としての期待も高まっています。 車載用に研究開発が行われてきたリチウムイオン二次電池が、ハイブリッド車や電気自動車に搭載される事例が出始めており、今後市場が急速に拡大していくと予想されています。
経済産業省の機械統計に基づく電池の総生産(2008年(暦年))を図表1に示します。一次電池および二次電池を併せた生産総数は53.8億個、生産総額は8,461億円の規模となっています。繰り返し利用可能な二次電池は、使い捨てとなる一次電池と比較して、生産数シェアでは32.8%(17.7億個)と低いものの、生産額シェアは85.2%(7,208億円)と、市場規模は大きいことが分かります。
ここで、リチウムイオン二次電池の「生産数」と「生産額シェア」に注目してみましょう。電池の構成技術として類似するリチウム一次電池との対比を図表2に示します。リチウムイオン二次電池は、生産数シェアが二次電池内で67.2%、全体に対して22.1%を占めています。また生産額シェアでは、二次電池内で53.5%、全体に対して45.6%を占めており、電池市場全体においても最も注目を集めている技術の1つであることが分かります。
次に、リチウム一次電池とリチウムイオン二次電池の販売推移(『数量および金額ベース』)を図表3に示します。リチウムイオン二次電池の販売数量は、(2001年を除き)1995年以降ほぼ単調増加を示しており、2008年には「12.6億個」と、リチウム一次電
池の販売数量(12.7億個)に迫る勢いを示しています。
また、リチウムイオン二次電池の販売金額は、2005年以降更に急増しており、市場が急速に拡大していることを示しています。
そこで、この「リチウムイオン二次電池市場」に焦点をあて、日本国内で出願された特許データをもとに、さまざまな観点から分析を試み、参入企業の競合関係
を明らかにしていきます。
今回の分析では、1993年から2009年8月末までに公開・登録されたリチウムイオン二次電池に関連する特許群を抽出しました。分析に用いた特許庁の分類(FI/Fターム)を図表4に示します(※)。
リチウムイオン二次電池を構成する技術要素は、「電極」「電解質」「セパレータ」「保護回路」等、さまざまな技術から成り立っているため、リチウムイオン二次電池の構成要素と特定出来る特許庁の分類は、網羅的に採用しました。
今回は、2つのFI「H01M10/00 102」「H01M10/00 103」、6つのFターム「5H029 AL12」「5H043 BA19」「5H050 BA16」「5H050 BA17」「5H050 BA18」「5G503 BB02」を選定しました。
その結果、リチウムイオン二次電池に関連する公報「23,282件」が抽出されました。これを母集団とし、「ビズクランチャー」を用いて分析を行いました。リチウムイオン二次電池の出願件数推移を図表5に示します。1993年から2001年にかけて出願件数が単調に増加しており、2001年のピーク時には1,900件に迫っています。
リチウムイオン二次電池市場では、2000年前後にリチウムイオン二次電池の発火事故などが相次ぎ、販売数量・販売金額が前年比で落ち込んだ時期があります。
特許出願件数が最大となった2001年は、この時期と重なっており、リチウムイオン二次電池の保護回路に関する研究開発が盛んに行われた結果として、特許出願件数が増えたと考えられます(実際に、リチウムイオン二次電池の充放電回路に関する特許出願は、2000年前後から活発化)。
2002年以降は、1,400件~1,700件前後で横ばい推移しているものの、現在も数多くの特許出願が継続しています。
今回は市場背景と出願動向を中心に述べましたが、次回は、出願人別出願件数ランキングや出願動向からの競合状況の分析など、さらに詳細を見ていきます。
※経営分析、競合調査、特許分析サービスに関する詳細は、
「企業向け」「大学・研究機関向け」「金融機関向け」の各ページをご参照ください。
特許分析のパテント・リザルト TEL:03-5802-6580
特許分析・経営分析関連のつぶやき &
特許分析・経営分析関連のFacebook
Copyright c Patent Result Co., Ltd.