『ビズクランチャー』には「課題・解決マトリクス」と呼ばれる分析機能が搭載されています。この機能により、調査対象の特許群においてどのような技術課題があり、それに対してどのような解決策が取られているかを視覚的に捉えることができます。 その一例として、「有機型太陽電池」分野に関する分析事例を紹介します。有機型は将来の太陽電池技術として出願が増加傾向にあり、注目度の高い分野です。今回は、同分野全体における「課題・解決手段」と、大手エレクトロニクスメーカーであるシャープ、ソニー、東芝の3社の「課題・解決手段」について調査しました。
図1は、有機型太陽電池分野全体のマトリクス図です。表の縦軸は「課題」、横軸は「解決手段」に関するキーワードを、表の中の数値は各分類に含まれる公報件数を表しています。件数が多い部分ほど赤色になるヒートマップ形式で表示されます。
これを見ると、「効率」を課題とする「課題2」に該当する出願件数が最も多いことが分かります。ここで「効率」とは主に「変換効率」のことを指します。変換効率はあらゆる種類の太陽電池にとって最も重要な課題であるため、有機分 野においても最も出願件数の多い課題となっていることがうかがえます。この課題に対し、最も多い解決手段は「解決手段2」の「層」であり、次いで「解決手段3」の「半導体」、「解決手段1」の「色素」、「解決手段4」の「電極」などとなっています。このことから、「変換効率」の課題に対し、色素や半導体などの個別部位を解決手段に取るよりも、各層の組み合わせなど「層構成」の工夫により解決しようとしているケースが多いことが分かります。そのほかには「課題1」の「耐久性」、「課題3」の「安価」などを課題とする出願が多いことがうかがえます。
次に個別企業に着目して同様に分析します。図2はシャープの特許出願に関するマトリクス図です。シャープの課題は、主に「課題2」の「効率」、「課題5」の「コスト」の2つに集中しています。また、信頼性を意味する「課題8」の「長期」にも出願が見られます。このようにコストや信頼性などの課題に対する出願の多さがシャープの特徴であり、これらを主要な課題として挙げていることから、シャープの開発ステージは実用段階に近づいているものと考えられます。「課題2」に対する解決手段としては、「解決手段1、12、14」などの「色素材料」に関する出願が多いことが分かります。一方で「解決手段15」の「電解質」に対する出願件数が少ないことから、有機材料の中でも電解質に関しては積極的な開発が行われていないと考えられます。
次に個別企業に着目して同様に分析します。図2はシャープの特許出願に関するマトリクス図です。シャープの課題は、主に「課題2」の「効率」、「課題5」の「コスト」の2つに集中しています。
また、信頼性を意味する「課題8」の「長期」にも出願が見られます。このようにコストや信頼性などの課題に対する出願の多さがシャー プの特徴であり、これらを主要な課題として挙げていることから、シャープの開発ステージは実用段階に近づいているものと考えられます。「課題2」に対する解決手段としては、「解決手段1、12、14」などの「色素材料」に関する出願が多いことが分かります。一方で「解決手段15」の「電解質」に対する出願件数が少ないことから、有機材料の中でも電解質に関しては積極的な開発が行われていないと考えられます。
図3はソニーの出願に関するマトリクス図です。ソニーもシャープと同様に「課題2」の「効率」や「課題5」の「コスト」に関する出願が多いですが、注目すべき点として「課題1」の「耐久性」に対する出願件数が多いことが挙げられます。これらの出願の中には、湾曲に対する耐久性を課題としている特許公報が存在することから、ソニーはフレキシブル型太陽電池の開発を行っていることが考えられます。解決手段としては「解決手段2」の「層」ほかに、「解決手段10」の「膜」に関する出願が多く見られます。これらは特に半導体膜に関する出願であり、半導体材料そのものよりも、半導体材料を膜にした場合についての開発が中心になっているものと考えられます。さらには半導体に関する解決手段である「解決手段3、13」に対する出願が少ないことから、半導体材料自体の開発は積極的に行われていないと考えられます。
図4に東芝の出願に関するマトリクス図を示します。東芝は有機分野全体の傾向と同様に、「変換効率」に関する「課題2」に出願が集中しています。解決手段としては特に「解決手段1」の「色素」と「解決手段2」の「層」に集中しています。そのほか「解決手段15」の「電解質」にも出願が多く見られます。色素材料に関する出願は、同じエレクトロニクスメーカーのシャープ、ソニーにも見られますが、電解質に関する出願はありませんでした。このことから東芝の特徴は、電解質に関する出願が多い点にあるといえます。
以上の結果をまとめると次のようになります。
以上のように「課題解決マトリクス」を用いた分析を行うことで、各社の出願内容に対する特徴を把握することができます。
今回は有機分野において出願件数が多いシャープと、同じエレクトロニクスメーカーであるソニー、東芝を取り上げましたが、この分野には従来のシリコン系太陽電池を手掛けていないメーカー、具体的には化学系メーカーによる出願が非常に多く見られます。
これらの企業を含め、「ビズクランチャー」を使って分析することで、有機分野においてどのような企業がどのような強みを持っているのかを明らかにすることができます。また課題・解決マトリクス以外にも多彩な機能が搭載されており、インターネット上で調べ物をするような感覚で、スムーズに分析を進めていくことが可能です。
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