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「リチウムイオン二次電池 特許で見る技術競争力(4)~技術分野別に主要企業の開発動向を探る~」


2009年11月25日

株式会社パテント・リザルト アナリスト  榎本 健悟

7. リチウムイオン二次電池の主要な構成技術 ~特許分類コード別に見た"注目技術"を多角的に評価~

 ここまでは、リチウムイオン二次電池市場全体から見渡した、各社の特許出願動向の分析や参入企業の競合状況の可視化を行ってきました。今回は、リチウムイオン二次電池の主要な構成技術単位に細分化した、各社の取り組み状況などを見ていきす。
 リチウムイオン二次電池の主要な構成技術の抽出に当たっては、特許庁「特許戦略ポータルサイト」の分析レポートで採用されている「技術分野」の分類定義(※1)に従い、各公報における最新の審査経過情報を反映した「テーマコード」を技術分類の単位として細分化しました。図表1には、調査対象となる全公報(23,282件)を重複なしで網羅的に分類した結果として、テーマコード別出願件数が上位20分類の技術概要を示します(※2)。
 ここで、リチウムイオン二次電池の主要な構成技術に対して、件数比較だけでは見られない、特許の質的側面を評価していきましょう。本分析では、まずそれぞれの技術領域に分類された個々の特許についてパテントスコアを算出しました。次に、それぞれの技術領域について、パテントスコアから見た特許の注目度に応じて重み付けした「加重スコア(※3)」を合算して「テーマコード別スコア」を算出し、出願件数情報とともにグラフ化しました(図表2)。
 図表2を見ると、「【5H050】電池の電極及び活物質」「【5H029】二次電池(その他の蓄電池)」に関する特許出願が圧倒的に多く、この2つの技術領域で調査対象全体の約半数(11,533件、49.5%)を占めていることが分かります。また、テーマコード別スコアもこの2つの技術領域が突出しています。しかし、それぞれの件数規模と比較すると順位が入れ替わっているため、質(注目度)の高い特許が平均的に多い技術領域は、「【5H029】二次電池(その他の蓄電池)」である事が読み取れます(※4)。

図表1 主要な構成技術<クリックで拡大>

図表2 テーマコード別スコア(全体)<クリックで拡大>

 このように、テーマコード別スコア(技術領域ごとの「加重スコア」合算値)と出願件数情報と対比する事で、技術領域ごとの注目度合い(総合力)とともに、質の高い特許が平均的に多い技術領域を把握することも可能です。次章以降は、主要なエレクトロニクスメーカーや自動車メーカーを題材として、各業界を代表する合計6社の分析事例を紹介します。


8. 主要なエレクトロニクスメーカー間の比較

 ここでは主要なエレクトロニクスメーカーとして、パナソニック・三洋電機・ソニー(出願件数ランキング/「有効+出願中」特許件数ランキング共に上位3社)を取り上げます。図表3は、調査対象から見た各社の取り組み状況を示したものです。3社ともリチウムイオン二次電池の製造工程を幅広く手掛けているため、「【5H029】二次電池(その他の蓄電池);電池全体の製造方法などに関する技術」「【5H050】電池の電極及び活物質;(電池容量など電池の性能を左右する)電極関連技術に強みを有しています。一方、3社それぞれが強みを有する技術領域を多角的に評価する事で、各社の特徴を把握する事が可能となります(図表4)。ここで、各社が強みを有する技術領域とは、総合的な強さを示す「テーマコード別スコアが上位3位の技術領域」と、内面的な質の高さを示す「質の高い特許が平均的に多い技術領域」の2つの視点から示しています。

図表3 テーマコード別スコア比較<クリックで拡大>

図表4 各社の特徴<クリックで拡大>

 パナソニックは、「【5H050】電池の電極及び活物質」が特に強く、「【4G048】重金属無機化合物(2)」では「(電極活物質として用いられる)リチウム複合ニッケル-コバルト酸化物の製造方法」などで質の高い特許出願を行っています。この2つの技術領域はどちらも電極に関するものであり、電極関連技術全般で強い競争力を有しています。また、「【2G016】遮断器と発電機・電動機と電池等の試験」は、パナソニック全体から見た技術領域ごとの総合力では低いものの、「電力システムおよびその管理方法」などで質の高い特許出願を行っており、電池の性能評価技術にも強みを有しています。
 三洋電機は、「【5H043】電池の接続・端子」「【5H017】電池用電極の担体または集電体」など2社とは異なる技術領域に強みを持っています。また、テーマコードが「5H」から始まる技術領域全般に競争力を有しており、電池の生産技術に強みを有していることが分かります。
 ソニーは、「【5H029】二次電池(その他の蓄電池)」が特に強く、「【4G071】りん、その化合物;主に正極材料に関する技術」「【4G146】炭素・炭素化合物;主に負極材料に関する技術などで質の高い特許出願を行っています。「【5H011】電池の電槽・外装及び封口」「【5H012】電池のガス排気装置」「【5H021】電池のセパレータ」など、電池の主要な構成要素にも強みを有しており、電極・電池構成材料に関する技術で強い競争力を持っています。

9. 主要な自動車メーカー間の比較

 次に、主要な自動車メーカーとして、トヨタ自動車・日産自動車・デンソーを取り上げます(図表5)。図表3と対比すると、「【2G016】遮断器と発電機・電動機と電池等の試験」「【5G503】電池等の充放電回路」「【5H011】電池の電槽・外装及び封口」など、3社は概ね電池の性能評価充放電・保護回路に関する技術で強みを有しています。ここで、3社それぞれの特徴を見てみると、各社が強みを有している技術領域では、総合力と内面的な質の高さ両方を備えている傾向がうかがえます(図表6)。

図表5 テーマコード別スコア比較<クリックで拡大>

図表6 各社の特徴<クリックで拡大>

 トヨタ自動車は、「【5G503】電池等の充放電回路」で総合力と内面的な質の高さ両方を備えており、「【2G016】遮断器と発電機・電動機と電池等の試験」でも質の高い特許出願を行っていることから、電池の性能評価充放電・保護回路に関する技術が特に強いことが分かります。また、「【5H029】二次電池(その他の蓄電池)」「【5H050】電池の電極及び活物質」など、エレクトロニクスメーカーが注力している技術領域においても競争力を有しています。
 日産自動車は、「【5H011】電池の電槽・外装及び封口」「【5H043】電池の接続・端子」など、2社とは異なる技術領域(主に組電池(パック電池)の接続構造技術)で総合力と内面的な質の高さ両方を備えています。また「【5G503】電池等の充放電回路」「【2G016】遮断器と発電機・電動機と電池等の試験」「【5H021】電池のセパレータ」など、幅広い技術領域で質の高い特許出願を行っており、電池の性能評価充放電・保護回路に関する技術でも強みを有しています。
 デンソーは、「【5H029】二次電池(その他の蓄電池)」「【5G503】電池等の充放電回路」が総合力と内面的な質の高さ両方を備えています。ここで、「【5H029】二次電池(その他の蓄電池)」における質の高い公報群ではADEKA(アデカ)との共同出願が多く、他社との技術提携を重視した特許出願を行っていることが分かります。
 このように、特許分類コード別に見た注目技術を多角的に評価する事で、業界ごとに注力している技術領域の把握とともに、各企業の技術開発力を可視化することも可能となります。次回は、今回の分析結果を基にして、リチウムイオン二次電池市場から見た、パナソニックと三洋電機の経営統合を検証した結果を紹介していきます。


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(注)本分析には、現時点で「ビズクランチャー」に搭載されていない、研究開発段階のコンテンツも含まれています。

※1)特許戦略ポータルサイト分類、もしくは特許庁『特許検索ポータルサイト』内の「テーマ別検索ガイダンス」で用いられている分類軸の1つ。

※2)特許庁では、必要に応じてテーマの改正(テーマ統合・分割やFタームリスト再作成等)や新規テーマの作成等を行っています。しかし、出願日が古い公報などでは、既に統廃合された古いテーマコードが付与されたままで残っているものも含まれています。
 今回の分析では、特許庁の「テーマ改廃情報」を参照して、統廃合された古いテーマコードについては、現在も解析が継続しているテーマコードに紐付けを行った後に集計作業を行っています。なお、図表1に示した20分類が付与されている公報件数(および調査対象全体の公報件数に対する割合)は、「21,091件 (90.6%)」となっています。

※3)パテントスコアと加重スコアの関係は、概ね以下のようになっています。

 パテントスコア  加重スコア 
20
0.05
50
1
80
20
このように、特許の注目度に応じた重み付けを行うことで、パテントスコアの差異をより明確にしています。

※4)「数ある特許群の中から、光る特許群を効率的に抽出したい」「注目度の高い特許群と、そうでない特許群の差異を際立たせたい」といった場合には、加重スコアを用いるメリットが挙げられます。ここでは、いくつかの評価事例を比較して見ます。

 このように、単純なパテントスコアの合計値からは見られない、調査対象の総合力と内面的な質の高さを評価することが可能となります。また、分析に加重スコアを用いた場合では、標準的なパテントスコアの集合である調査対象に対しては、「1件当たりのポイント」が「1.0」となるため、出願件数情報との対比(質の高い特許が平均的に多いか否か)も容易になります。

 

※経営分析、競合調査、特許分析サービスに関する詳細は、
 「企業向け」「大学・研究機関向け」「金融機関向け」の各ページをご参照ください。

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