株式会社パテント・リザルト アナリスト 榎本健悟
今回は、出願状況から各社の開発動向を調査します。そこで図表1に、リチウムイオン二次電池関連特許の出願件数ランキング(上位30位)を集計しました(※1)。上位には、エレクトロニクスメーカー、材料メーカー、自動車メーカーなど、多様な業種の企業が並んでいます。1位はパナソニックの2,410件で、他社を圧倒していることが分かります。2位以下は、三洋電機(1,979件)、ソニー(1,974件)、ジーエス・ユアサグループ(1,256件)(以下、「GSユアサ」で統一(※2))と続き、上位4社が1,000件を超える規模の特許出願を行っています。ここで、各出願人(企業など)における取り組み状況を把握するため、累計出願件数の内訳に注目してみましょう。図表2に、失効したものや取り下げられたものを除く「有効+出願中」特許件数ランキングを示します。
図表2で、『「有効+出願中」特許件数順位』が『累計出願件数順位』と比較して、同一もしくは上昇している出願人は、次の特徴を有しています。
一方、『「有効+出願中」特許件数順位』が『累計出願件数順位』と比較して大きく下落している出願人は、「近年は自社内での研究開発規模縮小」もしくは「事業譲渡/事業撤退」を行っている可能性が挙げられます。実際、図表2の出願人中、順位の下落幅が最も大きい富士フイルムは、2008年に電池事業から撤退しています。
なお、富士フイルムが出願した公報の大半は、宇部興産へ出願人名義変更/権利譲渡が行われており(2009年8月末現在)、リチウムイオン二次電池関連技術における富士フイルムのノウハウは宇部興産に引き継がれているものと考えられます。 図表1および図表2では、直近の特許ステータスをもとに、出願人別に見た現時点の取り組み状況を比較しました。今度は、現時点に至るまでの時系列推移として、各出願人の出願動向に注目してみましょう。図表3に、出願件数ランキング上位15位の出願件数年推移を示しました。なお、2007年以降はすべての出願が公開されているわけではないため、背景の色を変えて区別ました。各社の出願件数推移の傾向は、概ね以下の3つに分類できます。
トヨタ自動車は2004~2007年、日産自動車は2002~2006年、SAMSUNG SDIは2002~2005年に年間50件以上の特許出願を行っています。特にトヨタ自動車は、2004年以降の出願件数の著しい増加が見られます。
GSユアサは、1997~2002年に年間100件以上の特許出願を継続していたものの、2003年以降は著しい減少が見られます。また新神戸電機は、1998~2004年に年間30件以上の特許出願を継続していましたが、2005年以降は10件以下に落ち込んでいます。東芝電池(2009年3月末に閉鎖)は、1994~2000年に年間20件以上の特許出願を継続していたものの、2001年以降は減少傾向が続いています。なお、東芝グループ本体となる東芝は、1998年以降の出願件数が概ね30件以上と、自社の研究開発に基づいた特許出願を現在も継続しています。
パナソニック、三洋電機、ソニー(出願件数ランキング/「有効+出願中」特許件数ランキング共に上位3位)は、3社とも1999年以降の出願件数が100件以上で推移しており、定常的な特許出願が継続しています。三菱化学は、上記3社と比較すると出願件数規模はやや少ないものの、1996年以降の出願件数が概ね30件以上で推移しており、セパレータや電極材料に関する特許出願が継続しています。
次回は、件数比較だけでは見られない、特許の質を評価していきます。
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