株式会社パテント・リザルト 専務取締役 関野 勝弘
日本における特許申請は、趨勢的には、ここ数年で40万件前後推移していたもの、昨年は、今までとは違った様相を示し始めてきている。
これは、リーマンショックにより、トヨタ・ソニーといった大手企業でも、数千億円の赤字・リストラを経験したことからも伺えよう。今まではどちらかというと、やや聖域的であった特許申請予算についても、コスト削減のプレッシャーが生じている。また、研究開発費の削減により技術開発ペースに遅れが生じたことなどの間接的影響も、安定的に推移してきた特許の申請件数が15%近く減少した要因と思われる。この2つの要因による影響の多寡なる判断は、今後の申請件数の推移等にゆだねられる複合的要因であるものと考えられる。
グローバルには、依然、新規技術開発に伴う特許申請の勢いは米国・欧州といった主要地域のみならず、振興国においてさらに勢いを増す状況にある。そのような中、多少、申請件数は減少したものと言え、日本に於ける特許審査待ち期間は、依然相対的に、遅延気味であるのが現状だ。
それに対し、当局も十分状況認識は持っており、任期を限った審査官制度の導入等で体制を整えてはいるものの、米国等に比べての増員ペースは遅く、多国間競争において、この登録の遅れに悪影響がでることが懸念されている。
予算が限られ、公務員数についても、増員が極めて難しい中、本質的な解決は容易ではない。 しかし、今までも述べたように、企業を含めて絶対的な申請件数が多いと思われる日本市場においては、近時、技術振興の名のもと、特許申請手続き関連収支が黒字であり、「特許申請・維持コストの低減」の方向に向いつつあるようである。 しかし、少なくとも、特許手続関連収支の黒字について、単純に現状の特許申請関連手数料の引き下げに向けることは、出願と処理スピードのバランスをより崩す方向となり、現在の問題(認可の遅延)の解決にはない。ここは敢えて、ベクトルとしては反対になるものの、申請コストの値上げ等の「無意味な申請」を抑制するような施策の導入すら俎上に乗せ、申請件数と登録までの期間のバランスをグローバル標準に鞘寄せすることを念頭においても良いような局面かとも思われる。
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