株式会社パテント・リザルト 専務取締役 関野 勝弘
日本において、「特許」「知財」を司るセクションは、大きく分けて「知財部」「R&D部門」「経営戦略・企画部門」の3つが挙げられ、この3つのセクションが「三位一体」となった経営戦略を図ることが理想と言われ続けている。しかし、やはり現実はなかなか理想どおりにはならずにバラバラであるケースが多く、また、「知財分門」が日々の特許申請業務・維持業務に追われ、「攻め」の風土になっていないケースが一般的になっている。
そのような中、昨年(2010年1月)の国際特許流通セミナーで、ある成功例がトヨタ自動車の知的財産部長 佐々木剛史氏より紹介された。
トヨタでは、1980年代後半には、その当時からカルフォルニア州等で問題提起され始めた「環境にやさしい車」の開発を経営上の高いプライオリティとして認知していた。そのミッションを実現すべく、まずは、「ガソリン車の劇的改善」「電気自動車の開発」「ハイブリッド車の開発」の3点について、各セクションが議論を重ね、90年前後には、その中で、「ハイブリッド車」の開発により重点をおくことを決定した。
その次のステップが、ユニークかつ特許の特性に則した戦略であった。まずは、その当時既に公表されていたハイブリッド関連の700件の特許と、6~7件のハイブリッドの基本的方法について分析した。当然、特許が多く出されている方法が有望な方法と思われたものの、トヨタは、あえて、その中で最も特許が出されていない方法に着目。そのハイブリッドの基本的方法について、人材・研究開発費を投入した。90年代前半に、続々と特許を出願し、囲い込みをはかり、それが現在の「プリウス」としてすばらしい「実」となって結実している。
一見、最も特許の少ないハイブリッドの方法はあまり将来性がないように見え、研究開発にリスクが高く不適に思えたが、結局、他人の特許に邪魔されるリスクが少ないことから、「急がば回れ」となり、経営上ベストな選択となった。
この例に見られるように、時として三位一体の知財戦略が企業にとって大きな財産にもなり、また、逆に他社から劣後する要因にもなることからも、ややもして「受身」になりがちな「知財部門」をどのようにして、「R&D部門」「経営戦略策定部門」と有機的に結合させられるかが、製造業の経営者の重要な手腕の見せ所と言えよう。
【ハイブリッド電気車両関連特許の競合状況(2011年1月末)】
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