弊社は、2025年7月18日までに日本特許庁で公開された「CO2吸収・吸着分離技術」に関する特許を対象に、特許分析ツール「Biz Cruncher」の『AI自動レポート機能』を用いて参入企業の調査結果をまとめました。本調査では、GX技術の一つである「CO2吸収・吸着分離技術」全般について、特許の質と量を総合的に評価しています。
Biz Cruncher の『AI自動レポート機能』は、登録された公報群（分析母集団）を対象にAIが横断的な収集・解析を行い、従来は人手で時間を要した集計・分類作業を自動化します。これにより、高精度かつ体系的な分析を迅速に提供することが可能です。
以下では、『AI自動レポート機能』から出力された内容の一部を抜粋してご紹介します。
注目企業と特徴
| 企業名 | 特徴 |
|---|---|
| 三菱重工業 | 排ガス処理システム (B01D 53/00: ガス・蒸気分離技術)における多層構造のCO2回収技術に強み |
| 東芝エネルギー システムズ | 蒸気タービンシステム (C01B 32/00: 炭素化合物)と連携したCO2回収技術を開発 |
| クラレ | 固体吸着材料： (B01J 20/00: 固体吸着剤・ろ過助剤)における金属錯体技術に注力 |
| EXXON MOBIL | 新規吸着材料 (B01J 20/00: 固体吸着剤・ろ過助剤)の開発、特に金属有機骨格(MOF)に強み |
パテントスコア総合力マップ（権利者）：三菱重工業と三菱電機の技術的優位性
図1：パテントスコア総合力マップ（権利者）
CO2吸収・吸着分離技術における日本企業の特許分析から、三菱重工業と三菱電機の技術的優位性が明らかになりました。
三菱重工業：CO2吸収技術のリーディングカンパニー
三菱重工業は総合スコア431.7でトップに立ち、パテントスコア最高値74.99、有効件数165件と圧倒的な存在感を示しています。特に、排ガス処理システムにおける多層構造のCO2回収技術に強みを持ち、アミン系吸収液を用いた効率的なCO2分離・回収方法を多数開発しています。三菱電機：多様な応用可能性を持つCO2回収技術
総合スコア294.64の三菱電機は、エレベータや空調システムなど、幅広い設備に適用可能なCO2回収技術を特徴としています。パテントスコア最高値68.57、有効件数22件と、独自の技術革新を展開しています。注目すべき海外企業
海外企業では、EXXON MOBILが総合スコア249.85で3位にランクイン。特に酸性ガスの分離技術において先進的なアプローチを示しています。これらの企業の特許分析から、CO2吸収・吸着分離技術の最新トレンドと技術的進展が浮き彫りになりました。
CO2吸収・吸着分離技術の技術的転換点：2008年と2017年の特許動向
図2：分野の推移
2008年：技術革新の最初の大きな波
2008年は、CO2吸収・吸着分離技術における重要な転換点となりました。この年、特許出願件数は207件と、前年比で75件も増加し、技術的なブレイクスルーが起こりました。主な特徴は、以下の技術革新です：
• 高効率CO2分離システム：三菱重工業が、排ガス処理における多層構造のCO2回収技術を開発
• エネルギー効率の向上：化学吸収法と物理吸収法を組み合わせた新しいハイブリッドシステム
• 吸収材料の多様化：アミン系吸収液の改良と新規材料の開発
2017年：技術の再活性化
2017年は、一時的な停滞期を経て技術が再び活性化した年です。出願件数は189件と、前年から55件増加しました。注目すべき技術的特徴：
• 低エネルギー分離技術：東海国立大学機構による省エネルギー型CO2分離回収法
• 新規吸着材料：神戸製鋼所による高性能吸着材の開発
• CO2の有効利用技術：直接空気回収(DAC)システムの萌芽
これらの年は、CO2吸収・吸着分離技術における重要な技術的転換点であり、環境技術の進化を象徴する特許群が生まれた時期と言えるでしょう。
権利者ランキング（内訳：ステータス）：三菱重工業が圧倒的な権利維持、関西電力とクラレは技術分野の再編を示唆
図3：権利者ランキング（内訳：ステータス）
CO2吸収・吸着分離技術における特許ステータスの分析から、企業の技術戦略における興味深い傾向が浮かび上がってきました。
権利維持における三菱重工業の圧倒的優位性
三菱重工業は、総特許件数379件のうち、135件が「権利継続」となっており、この分野における技術的な強みを明確に示しています。特に、排ガス処理システムにおけるCO2回収技術の詳細な特許網は、同社の持続的な技術開発への コミットメントを裏付けています。技術分野の再編を示唆する関西電力とクラレの動向
関西電力は111件の特許のうち、57件が「失効」となっており、この分野からの部分的な撤退または技術戦略の転換を示唆しています。同様に、クラレも98件の特許のうち29件が「失効」しており、CO2吸収・吸着分離技術における技術ポートフォリオの再構築の可能性が見られます。安定した技術開発を続ける東芝と東芝エネルギーシステムズ
東芝は286件の特許出願があり、76件が「権利継続」、80件が「失効」となっています。一方、東芝エネルギーシステムズは98件の特許のうち、54件が「権利継続」、5件のみが「失効」となっており、この分野における技術開発への継続的なコミットメントを示しています。海外企業の動向
EXXON MOBILは、103件の特許のうち29件が「権利継続」、36件が「失効」となっています。日本特許庁への出願数は限定的であるものの、依然としてCO2吸収・吸着分離技術において重要なプレイヤーであることを示唆しています。この分析から、CO2吸収・吸着分離技術は、既存の技術的優位性を持つ企業と、技術戦略を再構築する企業が共存する、非常に動的な技術分野であることが明らかになりました。三菱重工業、東芝エネルギーシステムズを中心に、この分野の技術革新は継続的に進化していることがわかります。
権利者×技術分野の出願戦略：三菱重工業と東芝の技術的進化の軌跡
図4：権利者×技術分野の出願戦略
CO2吸収・吸着分離技術における権利者の技術分野出願戦略から、日本企業の技術的進化の興味深い傾向が浮かび上がってきました。
三菱重工業：ガス分離技術への集中的アプローチ
三菱重工業は、2009-2011年に「ガス・蒸気分離技術（B01D 53）」と「炭素化合物（C01B 32）」の分野で集中的に特許出願を行っています。この期間、同社は排ガス処理システムにおけるCO2回収技術に特に注力し、多層構造のCO2回収プロセスに関する革新的な技術を開発しました。東芝エネルギーシステムズ：技術領域の拡大と深化
2015-2017年、東芝エネルギーシステムズは同じく「ガス・蒸気分離技術（B01D 53）」と「炭素化合物（C01B 32、C01B 31）」の分野で出願を集中させています。この時期、同社はCO2回収システムの効率化に向けて、吸収塔と再生塔の熱制御技術に重点を置いた特許群を形成しました。クラレ：固体吸着材料への戦略的投資
2009-2011年、クラレは「固体吸着剤・ろ過助剤（B01J 20）」分野で特許出願を急増させています。特に金属錯体を用いたガス分離技術に注力し、高効率で小型化可能な吸着材料の開発に取り組みました。海外企業の戦略：EXXON MOBILの継続的な技術開発
EXXON MOBILは、2012-2014年と2015-2017年にかけて「固体吸着剤・ろ過助剤（B01J 20）」分野で継続的な特許出願を行っています。ゼオライトイミダゾレート骨格を用いたCO2分離技術や、高効率ガス精製プロセスの開発に注力しています。これらの分析から、CO2吸収・吸着分離技術は、各企業が独自の技術的アプローチで継続的にイノベーションを追求している動的な分野であることが明らかになりました。
まとめ：CO2吸収・吸着分離技術の現在地と未来への示唆
≪技術進化の全体像≫
本分析から、CO2吸収・吸着分離技術は、日本企業を中心に急速に進化してきた動的な技術分野であることが明らかになりました。特に、以下の点が重要な示唆を提供しています：• 技術的リーダーシップ：三菱重工業と東芝が1990年代後半から2010年代にかけて技術革新をリード
• 戦略的多様性：各企業が独自のアプローチで技術開発を展開
• 継続的なイノベーション：既存技術の改良から新規吸着材料の開発まで、多角的な技術進化
≪今後の展望と提言≫
CO2吸収・吸着分離技術の更なる発展に向けて、以下の方向性が示唆されます：1. 技術融合の加速
- 異業種間の技術交流
- 学際的なアプローチの促進
- オープンイノベーションの推進
2. 実用化に向けた技術最適化
- エネルギー効率の向上
- コスト削減技術の開発
- 多様な産業への適用可能性探求
3. グローバル競争力の維持
- 継続的な研究開発投資
- 国際的な技術標準化への貢献
- 海外企業との戦略的パートナーシップ
最後に、Biz Cruncher の『AI自動レポート機能』で作成した本レポートについて、Google NotebookLM による音声解説（対話形式）をご用意しました。約8分間でレポートの要点を把握いただける内容となっております。
本レポートがあれば、音声による要約・解説も容易に実現可能です。ぜひ一度ご体験ください。
Biz CruncherのAI自動レポート機能や本記事について、ご質問などございましたらお気軽にお問い合わせください。