特許用語集
プライベート・エクイティ・ファンド
プライベート・エクイティとは、おおむね未公開の株式(企業の所有権)を意味する。
欧米では、自己の資金でプライベート・エクイティ投資を行う場合を「プリンシパル・インベストメント」と呼び、プライベート・エクイティ投資のノウハウを有する専門会社(プライベート・エクイティ・ファーム)が外部からの資金を集めてファンドを組成し、その資金をもってプライベート・エクイティ投資を行う形態と区別している。
米国ではプリンシパル・インベストメントよりもファンド形式が圧倒的に多いと言われ、かかるファンドを【プライベート・エクイティ・ファンド】(以下PEF)と呼んでいる。
このため、PEFとは、株式未公開企業に対する投資を目的とするファンドの総称であり、事業創生期の企業に対する投資を目的とする「ベンチャー・キャピタル・ファンド」(VCF)もこれに含まれるが、一般にPEFと呼ばれるものは、VCFの投資対象ではない既に一定の事業規模・実態を有する企業を投資の対象とするファンド(特にバイアウト・ファンド)を指すことが多い。
このような投資活動を目的とするファンドはこれまでわが国においてはほとんど知られていなかったが、1999年に当時は無名であった米国系のプライベート・エクイティ・ファームであるリップルウッド・ホールディングス等による日本長期信用銀行(現新生銀行)の買収計画が発表された以降、にわかに注目を集めるようになった。
それは、PEFが投資銀行に新たな収益源を提供し、機関投資家に有望な投資機会を提供するものであると同時に、これまでになかった事業再編(再生)スキームを提供する可能性を有しているからである。
なお、プライベート・エクイティ投資は、投資先企業の株式を所有すると同時に実体的にその経営権を執行するため、M&Aによる会社の買収そのものであるとも言えるが、投資資金の回収を目的とする会社売却やIPOにより利益を上げるためには、投資先企業の企業価値の増大を実現するために必要な知識・ノウハウを持った「プロの経営者」による経営実務の執行が不可欠となる。
この点が、本来、圧倒的な技術力や事業構築力を持つ「カリスマ的創業者」が存在することが前提となるベンチャー企業投資とプライベート・エクイティ投資の根本的な相違と言ってよい。
しかしながら、前述したプライベート・エクイティ投資における「プロの経営者」や「カリスマ的創業者」が存在するベンチャー企業が数多く輩出される環境に無いわが国の現状に鑑みれば、ハンズオン型投資の形態を強めつつあるVCFとPEFにおける課題の本質は同じポイントに帰結しているようにも思われる。
すなわち、投資案件を評価・選別する能力と投資先企業の価値を増大せしめる経営執行体制の構築に関する具体的なソリューションの確立である。
かかるソリューションの確立なくして、ファンドによる高配当の実現はあり得ないため、年金基金等潤沢な資金源がその運用に頭を抱えながら、一方では成長性の高い投資案件に微々たる資金しか供給されないというわが国固有の金融仲介機能不全問題は永遠に解決されないと思われる。
つまり、問題の本質は「資金」ではなく「仕組み」と「人」にあると認識すべきである。