株式会社パテント・リザルト
先日、米・アップルが米・バーネットX・ホールディング(以下バーネットX)のセキュリティー技術に関する特許を無断使用したとして6億2500万ドル(約740億円)強の賠償金を支払うよう命じる判決が下されたとの報道がありました。本報道に関する訴訟は2012年から始まっています。地裁段階ではアップルが敗訴し、CAFC(Court of Appeals for the Federal Circuit:連邦巡回区控訴裁判所)に控訴。2014年のCAFC判決は地裁差し戻しなり、その差し戻し裁判の判決が今回の報道となっております。
これら一連の訴訟で原告となっているバーネットXはNPE(Non-Practicing Entity;特許不実施主体)とみなされており、アップルのみならずマイクロソフト等からもライセンス収入を得ています。
今回の訴訟で問題となっている特許はUS6502135、US7490151、US7418504、US7921211の4件です(以下当該特許)。そこで、本コラムでは特許分析ツール「Biz Cruncher」を用い、これら当該特許及び周辺特許を調査しました。
【出願人について】
当該特許はバーネットXが出願したものではなく、全て米・Science Applications International Corporation (以下SAIC)が出願したものです。2006年に権利がバーネットXに移転しており(図1)、SAICから特許を買い取ったとされています。当該公報のうち3件は2006年以前に公開されていたので、バーネットXがSAICから当該公報を購入するよりも前にアップル等の企業が何らかのアクションを起こしていれば、このような事態にはならなかったかもしれません。なお、バーネットXの役員にはSAIC出身者がいるという事実も興味深い点の一つと言えます。
【当該特許の関連性について】
図2;当該特許の関連性
当該特許はパテントファミリーという形でそれぞれが関連しあっています。図2はBiz Cruncherのファミリービューアーを用いて出願の流れを一部抜粋したものです。仮出願(※1)2件をもとにUS7010604が出願され、そこから継続性出願(※2)を繰り返すことで特許を増やしています。継続性出願を用い特許件数を増やすという行為は米国ではよく見られるものであり、NPE企業のみならず、パテントプール内に自社特許件数を増やす目的でメーカー系企業なども行っています。このパテントファミリーは当該特許だけではなく、米国内外で120件ほどの特許で成り立っており、そのうち米国特許は60件強、残りは国際出願を通した日本や欧州特許庁等への出願となっています。米国における手続き上の出願日が2012年以降のものを除き、出願当初の名義はSAICとなっており、上述の継続性出願を繰り返す行為はSAICによって行われていたことが分かります。また、特許の売り方としてSAICを見た場合、継続性出願により特許件数を増やすことで、売却価格の総額を引き上げることに成功したのではと考えられます。
【バーネットXに対する抵抗】
現状ではアップルが敗訴した形となっていますが、2012年に訴訟が起こされる以前から訴訟が起こされた後もアップル、またアップル以外の企業も米国特許法で認められた手段により様々な抵抗をしています。まず提訴される前の2011年までに当該特許全てに再審査請求が起こされています。また2013年以降は異議申立の一種である、当事者系レビュー(Inter Partes Review:以下IPR)が多用されています(注:IPR制度は2012年9月16日から開始)。再審査請求は匿名で出来るため請求人の把握が困難ですが、IPRは請求人が明らかにされています。今回問題となっている4件についてはアップルのみならず、マイクロソフト、RPX、THE MANGROVE PARTNERS MASTER FUND、NEW BAY CAPITALといった企業がIPRを請求しています(図3)。しかしながら現状の結果はアップルの敗訴となっていることから、今回の件ではIPRにより異議が認められなかったものと推察されます。
【その他の米国特許】
前述のように米国には当該特許の他に継続性出願による関連特許を合わせると60件強の特許が存在します。特に手続き上の出願日が2011年と2012年となるものが多いことが特徴です(図4;仮出願は集計対象外)。これらの特許は登録前に取り下げられたものが数件あるものの、ほとんどが特許登録されており、それ以外は現在も審査中となっています。権利の起点となる日は全て1999年なので権利が満了する年は通常では2019年ですが、一部の特許は審査遅延等が原因で通常20年の満了期間が延長されています(図5)。さらに特徴的なこととして、再審査請求やIPRは当該4件以外にも起こされており、特にIPRは9件に対し請求されています。
【米国外での関連特許】
今回問題となっている特許はパテントファミリーという形で米国以外にも出願されています。図6は今回問題となった4件を含むパテントファミリーにおける出願国を集計したものです。欧州については欧州特許庁を通してドイツ、フランス等6カ国に権利を移行しています。日本への出願も見られ、中にはソニー及びエリクソンが出願した特許の審査の際に引用され、拒絶査定に導いたものも存在します(図7)。
【バーネットXその他の特許について】
米国におけるバーネットX名義の特許は仮出願を除くと70件となっています。このうち当該特許と関連性がないものが10件強ありますが、はじめからバーネットX名義であった出願は2件のみで、残りはSAIC名義による出願となっています。従ってバーネットXはSAICが出願した特許を元に活動している企業ということが出来ます。なお、当該4件と関連性がない10件強の特許には、現在のところ再審査請求やIPRの請求はなされていません。
今回の判決は地裁レベルであるため、アップルは控訴するものと考えられます。しかしながら前述したように当該特許以外にもIPRが申請されている特許が多く存在するため、アップルvsバーネットXの今後の行方にも注視が必要といえます。
※本コラムのデータは2015年12月までに発行された米国特許を元としています。
本分析の詳細については、特許・技術調査レポート「個別企業特許ポートフォリオ分析:VirnetX」にてご覧いただけます。
【価格】
200,000円(税抜) 納期:2週間
(注)レポートは弊社データベースにおける最新の収録範囲に基づき作成いたします。
そのため、ご発注のタイミングによっては上記と値が異なる可能性があります。
【納品形態】
冊子1冊。及びレポートのPDF、別添資料をCD-ROMに収録。
【レポート収録内容】
第1章 米国特許分析
1-1 出願件数の推移
1-2 技術分野別分析
1-3 引用情報分析
第2章 グローバル状況分析
2-1 出願件数の推移
2-2 国別出願件数ランキング
2-3 国際出願、欧州特許サーチレポート引用分析
2-4 欧州特許各国移行先ランキング
第3章 日本特許分析
3-1 出願件数の推移
3-2 技術分野別分析
3-3 引用情報分析
第4章 【参考資料】
4-1 分析に用いたツール「Biz Cruncher」について
4-2 パテントファミリーについて
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