弊社はこのほど「大学・研究機関」を対象に、2020年の特許審査過程において他社特許への拒絶理由として引用された特許件数を企業別に集計した「大学・研究機関 他社牽制力ランキング2020」をまとめました。この集計により、直近の技術開発において競合他社が権利化する上で、阻害要因となる先行技術を多数保有している先進的な企業が明らかになります。
集計の結果、2020年に最も引用された企業は、産業技術総合研究所、次いで科学技術振興機構、東京大学となりました。
【大学・研究機関 他社牽制力ランキング2020 上位10社】
順位 | 企業名 | 引用された 特許数 |
---|---|---|
産業技術総合研究所 | 906 | |
科学技術振興機構 | 371 | |
東京大学 | 339 | |
東北大学 | 260 | |
京都大学 | 241 | |
大阪大学 | 228 | |
東京工業大学 | 216 | |
UNIVERSITY OF CALIFORNIA | 190 | |
鉄道総合技術研究所 | 180 | |
九州大学 | 171 | |
1位 産業技術総合研究所の最も引用された特許は「直動伸縮アーム機構、及びこれを備えたロボットアーム」に関する技術で、計7件の審査過程で引用されています。このほかには「サーマルリサイクルや溶媒処理の問題等が生じず、強度が強い熱可塑性樹脂組成物」に関する技術が引用された件数の多い特許として挙げられ、大王製紙の「セルロースナノファイバーの製造装置」など計6件の拒絶理由として引用されています。
2020年に、産業技術総合研究所の特許によって影響を受けた件数が最も多い企業は富士電機(17件)、次いで東芝、パナソニックIPマネジメント(いずれも12件)となっています。
2位 科学技術振興機構の最も引用された特許は「透明薄膜電界効果型トランジスタ」に関する技術で、半導体エネルギー研究所の6件の審査過程で引用されています。このほか「低濃度のターゲット分子を高感度に検出可能な技術」が引用された件数の多い特許として挙げられ、凸版印刷とABBOTTの計4件の拒絶理由として引用されています。
2020年に、科学技術振興機構の特許によって影響を受けた件数が最も多い大学・企業は京都大学(12件)、次いで半導体エネルギー研究所(8件)、東芝、大阪大学(いずれも7件)となっています。
3位 東京大学の最も引用された特許は「ウイルスに対し変性や分解などの構造的な破壊を伴うウイルス不活化剤」(神奈川県立産業技術総合研究所と共同出願)に関する技術で、イビデンの「抗ウイルス性部材」関連特許など計15件の審査過程において拒絶理由として引用されています。
2020年に、東京大学の特許によって影響を受けた件数が最も多い企業は、イビデン(16件)、次いで東芝(9件)、日本電気硝子、リコーエレメックス(いずれも7件)となっています。
そのほか、4位 東北大学は「中性子捕捉療法における、中性子照射の自由度を向上する技術」、5位 京都大学は「高品質のGa2O3系半導体素子」が、最も引用された特許として挙げられます。
日本特許庁に特許出願され、2020年12月までに公開されたすべての特許のうち、2020年1月から12月末までの期間に拒絶理由(拒絶理由通知または拒絶査定)として引用された特許を抽出。
本ランキングでは、権利移転を反映した集計を行っています。2021年5月1日時点で権利を保有している企業の名義でランキングしているため、出願時と企業名が異なる可能性があります。
業種は総務省の日本標準産業分類を参考に分類しています。
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