弊社はこのほど、日本に出願された無人搬送機関連技術(※1)について、特許分析ツール「Biz Cruncher」を用いて参入企業に関する調査結果をまとめ、レポートの販売を開始しました。
無人搬送機は作業ラインの効率化や重量物搬送の安全化などを目的として、工場や倉庫、物流拠点等で広く利用されています。本調査では無人搬送機関連技術の特許を集計し、各個別特許の注目度を得点化する「パテントスコア」をベースとして、特許の質と量から総合的に見た評価を行いました。
その結果、「総合力ランキング(※2)」では、1位村田機械、2位ダイフク、3位AMAZON TECHNOLOGIESとなりました。
【無人搬送機関連技術 特許総合力トップ5】(表1)
順位 | 企業名 | 総合力 (権利者スコア) |
有効特許件数 | 個別力 (最高スコア) |
---|---|---|---|---|
村田機械 | 1241.2 | 325 | 79.2 | |
ダイフク | 641.8 | 193 | 71.6 | |
AMAZON TECHNOLOGIES | 299.2 | 21 | 67.6 | |
パナソニック | 239.3 | 31 | 74.0 | |
東京エレクトロン | 214.0 | 51 | 69.0 | |
図1:無人搬送機関連技術 競合状況
総合力1位の村田機械は半導体ウェハー移送用の天井搬送車に関して注目度の高い特許が多くなっています。また、同社の注目度の高い特許には米・BROOKS AUTOMATIONが出願し、現在は名義が村田機械に変わっているものも見られます。2位のダイフクは床面有軌道式の無人搬送車における衝突防止に関する特許に注目度が高い特許が多くなっています。総合力3位には上位2社と比べて少ない件数ながら米・AMAZON TECHNOLOGIESが入っています。同社は搬送機そのものより搬送機を含めた物流管理システムに関して注目度の高い特許が多くなっています。
総合力3位のAMAZON TECHNOLOGIESはAMAZON.COMの関連会社で、現在同社が保有する当該分野の特許はほとんどがKIVA SYSTEMSによる出願となっています。KIVA SYSTEMSは2012年、AMAZON.COMにより買収されており、当時はニュース等でも広く紹介され、弊社ウェブサイトでもKIVA SYSTEMSの米国特許における分析事例を取り上げています(リンク:https://www.patentresult.co.jp/ column/2012/04/amazonkiva-systems.html)。当該分野では一部の特許がAMAZON TECHNOLOGIES名義で出願されていますが、原出願日(権利発生の起点となる日付)は買収前であり、また発明者がKIVA SYSTEMS名義の出願と同じであることから、現状ではAMAZON TECHNOLOGIESが持つ当該分野の技術は全てKIVA SYSTEMSの時代に発明されたものであることが分かります。
次にAMAZON TECHNOLOGIES名義の特許を権利化していく際に、どういった企業が障害となっていたか、また同社の特許がどのような企業の障害となっているかについて、引用情報を用いて調査しました(※4)。AMAZON TECHNOLOGIESの先行企業(引用数ランキング)を見ると(図2;先行企業特許数が複数の企業のみ表示)、AMAZON TECHNOLOGIESにとって最も障害となってきた企業は村田機械であることが分かります。また、米国金融機関名義の特許が2件見られますが、これらは元の出願がシンフォニアテクノロジーであり、この2件を合わせるとシンフォニアテクノロジーも村田機械と同じく先行企業特許数が4件となり、AMAZON TECHNOLOGIESにとって村田機械と同様に障害となっていた企業であることが分かります。一方の追随企業(被引用数ランキング)は件数が少なく全体で2件のみとなっています(図3)。これら2件のうち、ミサワホームによる特許は搬送「システム」、ダイフクによる特許は搬送「装置」に関するものという特徴があります。AMAZON TECHNOLOGIESによる特許は出願が比較的新しいことから、現在のところ引用された件数が少ないですが、今後本分野におけるシステム関連特許が増加すると、同社の特許が引用されるケースも増加していくものと予想されます。
図2:AMAZON TECHNOLOGIESの先行企業ランキング
図3:AMAZON TECHNOLOGIESの追随企業ランキング
本分析の詳細については、定型レポート「無人搬送機関連技術」にてご覧いただけます。
(※1)無軌道、有軌道の双方を含みます。
(※2)総合力の評価では、個別特許の注目度を得点化する、「パテントスコア」を企業や研究機関ごとに集計し、パテントスコアが50点以上のものを合算しています。50点以上のものだけを集計している理由は、パテントスコアが低くても特許件数が多いことによって総合力が上がってしまうことを防ぐためです。
(※3)「パナソニック」はパナソニック株式会社、及びパナソニックIPマネジメント株式会社を一つにまとめて集計。
(※4)AMAZON TECHNOLOGIES名義の特許において、拒絶理由通知、拒絶査定を「受けた」特許に対する引用先行文献(引用特許)、先行文献として他社の特許の拒絶理由通知、拒絶査定に引用「された」特許(被引用特許)を集計。
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