弊社はこのほど、日本に出願された電気脱イオン装置関連技術について、特許分析ツール「Biz Cruncher」を用い、参入企業に関する調査結果をまとめ、レポートの販売を開始しました。
本調査では、薬剤によるイオン交換体の再生が不要で、連続運転により純水を効率よく製造可能な電気脱イオン装置に着目し、特許の質と量から総合的に参入企業の競争力を見た「特許総合力ランキング(注1)」を集計しました。
その結果、1位 オルガノ、2位 栗田工業、3位 GENERAL ELECTRICとなりました(表1、図1)。
【電気脱イオン装置関連技術 特許総合力トップ5】(表1)
順位 | 企業名 | 総合力 (権利者スコア) |
有効 特許件数 |
出願 件数 |
個別力 (最高スコア) |
---|---|---|---|---|---|
オルガノ | 439.5 | 106 | 207 | 91.0 | |
栗田工業 | 321.2 | 101 | 181 | 81.5 | |
GENERAL ELECTRIC | 175.6 | 18 | 27 | 68.9 | |
EMD MILLIPORE | 118.2 | 11 | 19 | 70.1 | |
EVOQUA WATER TECHNOLOGIES | 108.7 | 11 | 11 | 64.0 |
図1:電気脱イオン装置関連技術 競合状況
1位オルガノの注目度の高い特許には、「原子力発電の復水処理において、高pH値でも長時間の連続運転を可能とした電気脱イオン装置」などが挙げられます。
2位栗田工業は、「イオン交換体の充填密度や水とイオン交換体との接触効率が高く、脱塩室内で部分的に異なった電流密度の電流を流すことが可能な電気脱イオン装置」などが注目度の高い特許として挙げられます。
そのほか、3位GENERAL ELECTRICは、保有する18件の有効特許のうち2件を2006年にE CELLから、2件を2010年に旭硝子からそれぞれ権利取得しています。同社の注目度の高い特許には、旭硝子から権利取得した「脱塩室の厚みを増すことで膜使用面積を抑え、同時に電気抵抗も低く抑えた、生産水量の大きい脱イオン水製造装置」などが挙げられます。
4位EMD MILLIPOREは、「高速でイオンを除去し、スケーリングレベルが低い電気脱イオン装置」などが注目度の高い特許として挙げられます。
5位 EVOQUA WATER TECHNOLOGIESは、保有する11件の有効特許のうち7件を2014年にSIEMENS PTEから、2件を2015年にSIEMENS WATER TECHNOLOGIES HOLDINGから、1件を2015年にCHEMITREAT PTEからそれぞれ権利取得しています。同社の注目度の高い特許には、「逆浸透による水処理と組み合わせた、高純水を生成する連続式電気脱イオン装置」などが挙げられます。
6位以下では、オスモ、水ing、ダイセン・メンブレン・システムズ、FUJIFILM MANUFACTURING EUROPE、三浦工業などがそれぞれ上位にランクインしています。
図2は、電気脱イオン装置の技術課題のうち「水質向上」、「スケール対策」、「脱塩効率」、「長期安定性」、「コスト」、「低電力化」に着目し、総合力上位5社が注力する技術課題を調査した結果です(注3)。
図2:総合力上位5社が注力する技術課題の状況
総合力トップのオルガノは、「水質向上」の割合が最も高く、栗田工業と比較すると「低電力化」の高さが特徴の一つとして挙げられます。一方、栗田工業は、「水質向上」、「スケール対策」、「脱塩効率」、「長期安定性」の割合がオルガノの割合をそれぞれ上回っています。
GENERAL ELECTRICは「スケール対策」を、EMD MILLIPOREは「水質向上」を、EVOQUA WATER TECHNOLOGIESは「低電力化」を中心に出願しています。
図3は、総合力上位5社が直近に注力する技術課題を把握するため、出願期間別に集計した結果です(※横軸は出願時期、円グラフ右下には円グラフに該当する出願件数を表示)。
図3:総合力上位5社が注力する技術課題の状況(出願期間別)
オルガノは、各期間において「スケール対策」、「水質向上」、「脱塩効率」を中心とした出願がみられます。そのほかの技術課題についてみてみると、2001-2005年から直近2011-2015年において「長期安定性」や「低電力化」が減少する一方で、「コスト」の割合を伸ばし、直近2011-2015年では「コスト」の割合が「脱塩効率」に次いで4番目に高くなっています。
栗田工業は、「水質向上」をはじめ、「スケール対策」、「脱塩効率」、「長期安定性」を中心とした出願が各期間でみられ、直近2011-2015年においてはこれらの技術課題の割合が8割以上を占めています。
海外企業3社の2001-2005年から直近2011-2015年の期間における技術課題の推移をみてみると、GENERAL ELECTRICは「スケール対策」が、EMD MILLIPOREは「コスト」が、EVOQUA WATER TECHNOLOGIESは「低電力化」の割合がそれぞれ大きくなっていることが分ります。
本分析の詳細については、定型レポート「電気脱イオン装置関連技術」にてご覧いただけます。
(※1)総合力の評価では、個別特許の注目度を得点化する、「パテントスコア」を機関ごとに集計し、パテントスコアが50点以上のものを合算しています。50点以上のものだけを集計している理由は、パテントスコアが低くても特許件数が多いことによって総合力が上がってしまうことを防ぐためです。
(※2)ランキング集計において、GENERAL ELECTRICは以下の企業を1社にまとめています。
「GENERAL ELECTRIC」:GENERAL ELECTRIC、ジーイー・モーバイル・ウォーター、
ジーイーウォーターアンドプロセステクノロジーズカナダ、ジーイー・アイオニクス
(※3)6つの技術課題は、Biz Cruncher日本版を用いて公報のうち「要約」「明細・技術分野」「明細・課題」に記載されたキーワードをもとに定義し、集計しています。
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