靴・足袋・サンダルなど足の保護やファッションのために着用される履物は、使用する目的や用途、また使用者の性別や年齢によって様々な種類が存在します。長距離走行のため軽量で且つ着地時の負荷を吸収するジョギングシューズ、工事現場や工場など危険を伴う作業場で足を保護する安全靴、美容を目的として身長を高く見せるハイヒールなどが一例として挙げられます。
そこで弊社は、これら履物全般に着目し、関連分野に参入する企業の競争力に関する調査を行いました。1993年から2013年4月末までに日本の特許庁で公開された関連特許6,980件を対象に、特許の質と量から総合的に見た「特許総合力ランキング(注1)」を集計しました。
その結果、1位 NIKE(米)、2位 アシックス、3位 ミドリ安全という結果となりました(表1、図1)。
【履物関連技術 特許総合力トップ5】(表1)
順位 | 企業名 | 総合力 (権利者スコア) |
有効特許件数 | 個別力 (最高スコア) |
---|---|---|---|---|
NIKE | 819.1 | 100 | 79.0 | |
アシックス | 503.7 | 96 | 77.8 | |
ミドリ安全 | 279.9 | 51 | 75.2 | |
ミズノ | 274.2 | 74 | 69.8 | |
GEOX | 214.0 | 38 | 70.4 | |
図1:履物関連技術 競合状況
1位NIKEの注目度の高い特許には、甲皮部に縫糸を備え、耐伸長性、耐摩耗性、可撓性、および通気性等を有する「履物製品」などが挙げられます。同社は2003年以降出願件数が増加しており、有効特許(権利維持されている、または今後権利化される可能性のあるもの)は100件と全企業の中で最も多くなっています。
2位 アシックスの注目度の高い特許には、着地から離地に至る踵(かかと)の動きに応じたフィット感が得られる「踵のフィット性能を改良した靴」や、安定性を損なうことなく着地の際の衝撃を軽減し得る「婦人靴のヒール」などが挙げられます。同社は、ランニングシューズを中心としたスポーツシューズ関連技術を多く出願しており、また権利維持されている特許は89件と全企業の中で最も多くなっています。
3位 ミドリ安全の注目度の高い特許には、床面に水膜や油膜が存在してもこれらの膜を切り、接地面の意匠パターンが変形することなく床面を安定的に捉え続ける「耐滑靴底」や、側方からの荷重や衝撃から足指を保護するとともに、歩行時の足の動作を妨げることのない「先芯および先芯内蔵靴」などが挙げられます。作業靴を中心に出願する同社は、2005年以降の出願が多くみられます。
4位ミズノは、グリップ性および衝撃吸収性を向上し、特にインドアシューズに好適な「スポーツシューズのソール組立体」や、踵部分等の軟質弾性部材に波形シートを内蔵し、クッション性と競技力を両立する「スポーツ用シューズのミッドソール構造」などが、5位GEOXは、強度を損なうことなく、水蒸気透過性膜の通気性を大いに活かした「靴用の防水性・通気性底革」などが注目度の高い特許として挙げられます。
このほかの上位企業としては、靴全般の出願が多くみられるアキレスや、ゴルフシューズ関連の出願を中心とするダンロップスポーツ、地下足袋や作業靴を中心に関連技術出願する力王、また海外企業としてAdidas(ドイツ)、プーマ (ドイツ)等の企業が挙げられます。
図2:上位企業 履物関連技術 各国への出願状況
図3:上位企業 履物関連技術 PCTおよびEPC出願の状況
図2は総合力上位5社のパテントファミリー(注2)上位8ヶ国を集計した結果で、図3はWIPOとEPOへの出願にフォーカスして出願件数の年推移を比較したものです。5社全体として、国別ではアメリカが最も多く、近年では中国でパテントファミリーが多くみられます。また2004年以降にWIPO(PCT出願)への出願が増加しており、今後各国へ移行される件数は増加していくと予想されます。 企業ごとに見ると各社傾向が異なります。国内企業をみると、アシックスは、全期間ではアメリカへの出願が最も多く、その他国別ではドイツや中国、オーストラリアなどでパテントファミリーがみられます。また同社は、2004年以降にWIPOへの出願が増加しています。ミドリ安全は、2001年以降にWIPOへの出願が増加しており、国別でみると台湾と中国にパテントファミリーがみられます。ミズノは、全期間においてアメリカへの出願が最も多く、またWIPOよりも欧州特許庁(EPO)への出願が多くみられており、今後欧州各国への移行が予想されます。
本分析では以下企業のグループ化を行っています。
NIKE:NIKE、NIKE INTERNATIONAL、ナイキジャパン
アシックス:アシックス、アシックス商事
本分析の詳細については、定型レポート「履物関連技術」にてご覧いただけます。
(注1):総合力の評価では、個別特許の注目度を得点化する「パテントスコア」を機関ごとに集計し、パテントスコアが50点以上のものを合算しています。50点以上のものだけを集計している理由は、パテントスコアが低くても特許件数が多いことによって総合力が上がってしまうことを防ぐためです。
(注2):ファミリーデータは欧州特許庁のDefinition 3(http://www.epo.org/searching/essentials/patent-families/definitions.html)相当を使用。
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