弊社はこのほど、日本に出願されたスパッタリング装置関連技術(※1)について、特許分析ツール「Biz Cruncher」を用いて参入企業に関する調査結果をまとめ、レポートの販売を開始しました。
スパッタリングは薄膜製造技術の一つとして半導体やディスプレイ等の製造プロセスに用いられています。本調査ではスパッタリング装置関連技術の特許を集計し、各個別特許の注目度を得点化する「パテントスコア」をベースとして、特許の質と量から総合的に見た評価を行いました。
その結果、「総合力ランキング(※2)」では、1位キヤノンアネルバ、2位 APPLIED MATERIALS、3位アルバックとなりました。
【スパッタリング装置関連技術 特許総合力トップ5】(表1)
順位 | 企業名 | 総合力 (権利者スコア) |
有効特許件数 | 個別力 (最高スコア) |
---|---|---|---|---|
キヤノンアネルバ | 612.8 | 127 | 75.4 | |
APPLIED MATERIALS | 599.0 | 104 | 75.5 | |
アルバック | 526.3 | 215 | 79.5 | |
東京エレクトロン | 211.9 | 41 | 68.4 | |
シンクロン | 204.3 | 25 | 70.5 | |
図1:スパッタリング装置関連技術 競合状況
総合力1位のキャノンアネルバは磁性膜成膜用のマグネトロンスパッタ装置の構成に関して注目度の高い特許が多くなっています。2位のAPPLIED MATERIALSはプラズマ発生用コイルや電極シュラウドといった個々の部品に関する特許、3位のアルバックは大面積用途のスパッタリング装置に関して注目度の高い特許が多くなっています。半導体製造装置におけるスパッタリング装置の市場シェアはAPPLIED MATERIALSが圧倒的に高く、ディスプレイ用ではアルバックが、HDD等の磁性薄膜用ではキヤノンアネルバが高いシェアを有しています。こうした各社の特徴、強みはパテントスコアによる特許の評価においても表れています。
総合力上位3社は上述したようにそれぞれの特徴がありますが、直近で競合する企業がどこなのかを調査する目的で特許の引用情報を集計しました。図2はこれら3社が審査を受ける際にどのような企業の特許が先行技術として引用されて権利化の障害となったのか(3社から見た先行企業)、図3は3社の特許が先行技術として引用されてどのような企業の権利化に障害となったのか(3社から見た追随企業)を2010年以降の審査官引用に絞り集計した結果です。(※4)。各社の先行企業(引用数ランキング)を見ると(図2)、3社それぞれが互いに競合している状態となっていますが、その他は共通してかつて半導体製造を直接手掛けていたパナソニック、日立製作所、富士通等の国内電機メーカーが上位に入っています。これらの企業の特許は90年代の出願が多く、またほとんどが失効しているものの、現在でも装置メーカーである3社にとっては障害となっていることが分かります。続いて追随企業(被引用数ランキング)を見ると(図3)、日本の2社は引用数ランキングと同様にそれぞれがAPPLIED MATERIALSを含めた3社の競合状態となっていますが、APPLIED MATERIALSの出願特許が最も大きな障害となっている企業は東京エレクトロンです。APPLIED MATERIALSの特許が引用されて拒絶査定、拒絶理由通知を受けている東京エレクトロンの特許はスパッタ装置関連だけでなく、同じくプラズマ技術を用いるドライエッチングやCVD関連特許が多いという点で日本の2社とは異なる特徴があります。
図2:総合力上位3社の先行企業(引用件数)ランキング
図3:総合力上位3社の追随企業(被引用件数)ランキング
スパッタリング装置を用いる企業の製造拠点は日本のみならず各国に存在しており、従ってそれらの拠点に製品を納入する装置メーカーも自らの権利保護のため様々な国に出願しています。しかしながら各社における主要製品及びその顧客、さらには外国市場に関する戦略もそれぞれ異なることから、その結果出願する国もそれぞれ異なるものと考えられます。そこで総合力上位3社について、パテントファミリー情報(※5)を用いて外国への出願状況を調査しました(図4)。APPLIED MATERIALSの米国への出願が多いことは容易に想像がつきますが、それ以外の国への出願も多く、特に欧州とシンガポールへの出願が日本の2社と比較して目立ちます。日本の2社についてはアルバックが米国よりも韓国、台湾、中国といったアジア圏への出願が多いのに対し、キヤノンアネルバは米国への出願が最も多く、韓国、中国と比べ台湾が少ないということが分かります。つまりアルバックはアジア重視、キヤノンアネルバは米国を重視し、アジアでは韓国、中国を重視している、ということが言えます。
図4:総合力上位3社の外国への出願状況
本分析の詳細については、定型レポート「スパッタリング装置関連技術」にてご覧いただけます。
(※1)スパッタリングターゲット用部材に関する特許は含みません。
(※2)総合力の評価では、個別特許の注目度を得点化する、「パテントスコア」を企業や研究機関ごとに集計し、パテントスコアが50点以上のものを合算しています。50点以上のものだけを集計している理由は、パテントスコアが低くても特許件数が多いことによって総合力が上がってしまうことを防ぐためです。
(※3)APPLIED MATERIALSは米法人であるAPPLIED MATERIALS INC(有効特許件数95件)及び独法人であるAPPLIED MATERIALS GMBH & CO. KG(有効特許件数11件)を一つにまとめて集計。
(※4)総合力3社が出願した特許において、2010年以降に拒絶理由通知、拒絶査定を「受けた」特許に対する引用先行文献(引用特許)、及び2010年以降に先行文献として他の特許の拒絶理由通知、拒絶査定に引用「された」特許(被引用特許)を集計
(※5)パテントファミリーは欧州特許庁が定義するDefinition1(http://www.epo.org/searching/essentials/patent-families/definitions.html)に前後1世代を加えたもので集計。少なくとも日本にも出願し、同一のパテントファミリーである外国出願特許が集計対象。
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