投稿日:2012年03月09日

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【米国:非接触給電】特許総合力トップ3はAccess Business Group、MIT、Qualcomm

#環境・エネルギー , #電子部品・電子機器・電子材料

 弊社はこのほど、米国特許における非接触給電関連技術について、特許分析ツール「Biz Cruncher」を用いて参入企業に関する調査結果をまとめました。

 非接触給電技術はWPC(Wireless Power Consortium)という業界団体によって電磁誘導方式を用いた「Qi」規格が2008年に策定され、現在ではWPCの加盟企業は100社を超えています。一方、米・Massachusetts Institute of Technology(MIT)及び同校発のベンチャー企業である米・Witricityによる磁場共鳴方式を採用する企業も増えており、規格化争いも含め、非常に活発な分野となっています。また、アプリケーションもモバイル製品のみならず、電気自動車用途の開発も進んでおり、さまざまな業界を巻き込んだ競争が進んでいます。

 本調査では非接触給電技術関連の特許を集計し、各個別特許の注目度を得点化する「パテントスコア」をベースとして、特許の質と量から総合的に見た評価を行いました。

 その結果、「総合力ランキング(※)」では、1位 Access Business group、2位 Massachusetts Institute of Technology(MIT)、3位 Qualcommとなりました。

   【非接触給電関連技術 米国特許総合力トップ5】

順位 権利者 総合力
(権利者スコア)
開発規模
(出願件数)
個別力
(最高スコア)
1
Access Business Group953.8 pt8980.5 pt
2
MIT792.0 pt6077.2 pt
3
Qualcomm583.8 pt8079.4 pt
4
Witricity540.0 pt2680.4 pt
5
POWERMAT TECHNOLOGIES 189.1 pt1674.2 pt


 1位はAccess Business Groupですが、同社の特許はFulton Innovationsの技術によるものです(一部を除き権利移転などではなく、出願時からAccess Business Group名義)。Fulton InnovationsはWPCのRegular Membersの一員であり、電磁誘導型である「eCouple」技術を持っています。Access Business Groupはその件数だけを見てもWPCの中で重要な位置にいることが示唆されます。

 また、出願時期がMIT/WitricityやQualcommよりも早く(図1)、引用されている公報数も多いことから、当該分野における今後の権利化にはAccess Business Groupの特許が大きく影響を及ぼす可能性があります。なお、Fulton Innovationsは2008年にSplashpowerを買収していますが、権利移転の状況を調べてみると、Splashpowerの出願も、すべてAccess Business Groupに名義が変わっていることが分かります。



 総合力2位にはMITが、また4位にはMIT発ベンチャーのWitricityが入っています。WitricityはMIT特許の専用実施権者(exclusive licensee)であることから、MITをWitricityと同一視すると(図2)、総合力1位のAccess Business Groupを上回ります。

 MITの出願は2006年のピーク以降に激減し、近年ではWitricity名義による出願が中心となっています(図1)。これは、Witricityの設立年(2007年)とほぼ一致しており、磁場共鳴技術における開発の中心はWitricityに移ったものと考えられます。さらには大学から企業へのスピンアウトという点を考慮すると、Witricityの出願は、よりアプリケーションに近い開発が行われていると考えられ、その結果がトヨタ、IHI、Delphi等との協業にも結びついているものと考えられます。



 上記3社の出願状況を経過情報別に比較してみると、3者3様の違いが出てきました(図3;赤字は割合が最も大きい企業)。「継続性のある出願」の数が多いことは共通していますが、その種類がそれぞれ異なっており、Access Business Groupは「分割出願」が、MITは「継続出願」が、Witricityは「一部継続出願」が多くなっています。

 特にWitricityの一部継続出願件数が特徴的です。一部継続出願制度は「継続性のある出願」のうち、唯一クレームに新規事項の追加ができる制度です。Witricityはこの制度を用い、一度出願した後に自社の開発状況や外部状況を見てクレームに新規事項を追加しているものと考えられます。



 このほか、特に近年の出願が増えている点で注目すべき企業は3位のQualcommです(図1)。同社は5位のPowermat Technologiesと非接触給電技術で提携関係にもあり、QualcommとPowermatを同一視すると、その総合力はAccess Business Groupに近づきます。また、Nigelpowerという企業から権利の移転も受けています。近年の出願の勢いを考慮すると、今度大きな影響力を持つ可能性が示唆されます。


 本分析の詳細については、定型レポート「米国 非接触給電関連技術」にてご覧いただけます。

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(※)総合力の評価では、個別特許の注目度を得点化する「パテントスコア」を機関ごとに集計し、パテントスコアが50点以上のものを合算しています。50点以上のものだけを集計している理由は、パテントスコアが低くても特許件数が多いことによって総合力が上がってしまうことを防ぐためです。


【調査対象の特許群について】
1980年から2012年1月末までに公開された特許が対象。


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