弊社はこのほど、リン酸化合物系、特にリン酸鉄系リチウムイオン2次電池の技術領域における競合状況について調査した結果をまとめました。リン酸鉄系リチウムイオン2次電池は、出願件数自体はまだ多くありませんが、マンガン系と同様に、希少資源であるコバルトを正極材料に使ったリチウムイオン2次電池の代替として注目を集めています。資源としての制限が少ないため低コストで生産できるほか、安全性が高いという特徴があります。今回の調査では、個別特許の注目度を得点化する「パテントスコア」をベースとして、特許の質と量から総合的に見た評価を行いました(2010年4月末時点のパテントスコアに基づき評価)。
その結果、「総合力ランキング(※)」では、ソニーが断トツで1位となりました。ソニーは出願件数でも1位ですが、注目度の高い特許を多く保有しており、2位以下を大きく引き離しました。同社に次いで2位がフランス国立科学研究センター(CNRS)、3位がTDKとなっています。
【リチウムイオン2次電池 リン酸鉄系正極 特許総合力トップ5】
順位 | 企業名 | 総合力 (権利者スコア) |
開発規模 (特許件数) |
個別力 (最高スコア) |
---|---|---|---|---|
ソニー | 354.8 pt | 61 | 26.8 pt | |
フランス国立科学 研究センター | 104.5 pt | 8 | 24.9 pt | |
TDK | 90.2 pt | 6 | 22.3 pt | |
豊田中央研究所 | 86.8 pt | 15 | 15.3 pt | |
UMICORE | 81.5 pt | 5 | 24.9 pt | |
リン酸鉄系リチウムイオン2次電池は、特に熱安定性に優れていることから電気自動車(EV)用途に向いていると言われます。この技術分野で圧倒的な総合力を持つソニーはEV用リチウムイオン2次電池への参入を表明しているものの、他の大手電池メーカーとは異なり自動車メーカーとの提携は発表していません。しかし、ソニーと同様に国内自動車メーカーと提携関係がなかった東芝が三菱自動車のEV用にリチウムイオン電池を供給するニュースがあったように、今後自動車メーカーに対して複数の電池メーカーによる供給が増えると、リン酸鉄系リチウムイオン2次電池に強みを持つソニーの存在感が大きくなっていく可能性があります。
また、総合力5位にベルギーのユミコアが入っています(すべて2位CNRSとの共願)。リン酸鉄系リチウムイオン2次電池の代表的な外国企業としては、米A123システムズ、中国BYDが挙げられますが、正極材料全体としての市場シェアが高いユミコアが、リン酸鉄系の分野においても強みを持っているという興味深い結果となっています。
本分析の詳細については、特許・技術調査レポート「リチウムイオン二次電池 リン酸鉄系正極」にてご覧いただけます。
参入企業の技術力と成長性を取りまとめたレポートです。
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