弊社はこのほど「医薬品業界」を対象に、2020年の特許審査過程において他社特許への拒絶理由として引用された特許件数を企業別に集計した「医薬品業界 他社牽制力ランキング2020」をまとめました。この集計により、直近の技術開発において競合他社が権利化する上で、阻害要因となる先行技術を多数保有している先進的な企業が明らかになります。
集計の結果、2020年に最も引用された企業は、MERCK、次いでBAYER、F. HOFFMANN LA ROCHE(以下表記:ROCHE)となりました。
【医薬品業界 他社牽制力ランキング2020 上位10社】
順位 | 企業名 | 引用された 特許数 |
---|---|---|
MERCK(独・メルク) | 388 | |
BAYER | 314 | |
F. HOFFMANN LA ROCHE | 294 | |
NOVARTIS | 288 | |
PFIZER | 259 | |
大塚製薬 | 201 | |
GLAXOSMITHKLINE | 196 | |
MERCK SHARP & DOHME(米・メルク) | 195 | |
ABBOTT | 193 | |
BRISTOL-MYERS SQUIBB | 186 | |
※当ランキングでは、企業グループを考慮した名寄せを行っております。
※MERCKは医薬・化学企業ですが、同社発表の売上割合を基に医薬品業界に分類しています。
このため、当記事内の同社特許には「化学」技術も含まれています。
1位 MERCKの最も引用された特許は「負または正の誘電異方性を有する液晶媒体」に関する技術で、DICやJNCなどの計8件の審査過程で引用されています。このほかには「細胞媒介免疫応答のアップレギュレート、T細胞機能不全疾患(例えば腫瘍免疫)の治療及び癌の治療」に関する技術が引用された件数の多い特許として挙げられ、アクティブバイオテックエイビーなどの計3件の拒絶理由として引用されています。
2020年に、MERCKの特許によって影響を受けた件数が最も多い企業はDIC(24件)、次いでJNC(22件)、JNC石油化学(21件)となっています。
2位 BAYERの最も引用された特許は「出血性の病気『フォン・ヴィレブランド病』処置のためのFVIII変異タンパク質」に関する技術で、BIOVERATIV THERAPEUTICSなどの計3件の審査過程で引用されています。このほかには「高圧および低圧ハンドマニホールドを備えた流体送達システム」に関する技術が引用された件数の多い特許として挙げられ、JMSとニプロの計2件の拒絶理由として引用されています。
2020年に、BAYERの特許によって影響を受けた件数が最も多い企業は、BASF、DOW AGROSCIENCES(いずれも9件)、次いでCOVESTRO DEUTSCHLAND(7件)となっています。
3位 ROCHEの最も引用された特許は「ヒトCSF-1Rに対する抗体の併用療法及びその使用」に関する技術で、ファイヴプライムセラピューティクスインクの「がんの併用療法」関連特許など計6件の審査過程において拒絶理由として引用されています。
2020年に、F. HOFFMANN LA ROCHEの特許によって影響を受けた件数が最も多い企業は、シスメックス(9件)、次いでGENENTECH、ニコン(いずれも6件)となっています。
そのほか、4位 NOVARTISは「腫瘍細胞に発現する受容体『PD-1』に対する抗体分子」、5位 PFIZERは「新生物または悪性障害の診断・治療のための抗−5T4抗体」が、最も引用された特許として挙げられます。
日本特許庁に特許出願され、2020年12月までに公開されたすべての特許のうち、2020年1月から12月末までの期間に拒絶理由(拒絶理由通知または拒絶査定)として引用された特許を抽出。
本ランキングでは、権利移転を反映した集計を行っています。2021年5月1日時点で権利を保有している企業の名義でランキングしているため、出願時と企業名が異なる可能性があります。
業種は総務省の日本標準産業分類を参考に分類しています。
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